2019-08-09

アマチュア野球14団体
ユニセフ「子どもの権利とスポーツの原則」賛同発表会を実施






 一般財団法人全日本野球協会(以下、BFJ)は加盟団体等アマチュア野球13団体とともに、ユニセフ(国連児童基金)と日本ユニセフ協会が2018年11月に発表した「子どもの権利とスポーツの原則」に賛同することとし、8月8日(木)に発表会を行いました。BFJでは今後も各団体と協力し、野球に関わるすべての子ども達の健全な成長を支える取り組みを進めてまいります。

【挨拶及び趣旨説明】

早水 研(公益財団法人日本ユニセフ協会 専務理事)

 昨年11月20日、ユニセフと日本ユニセフ協会は、スポーツが、真に子どもの健やかな成長と豊かな人生を支えるものとなることを願って、「子どもの権利とスポーツの原則」を発表いたしました。発表の際には、スポーツ庁の鈴木長官より、この「原則」がスポーツ基本法とその理念を共有するものとのお言葉をいただきました。また、日本スポーツ協会、日本障がい者スポーツ協会、日本オリンピック委員会、日本パラリンピック委員会などの皆さまにもご同席・ご賛同をいただきました。アマチュア野球界にはたくさんの団体があると伺っております。このたび14の団体が一斉に賛同いただけますことを大変うれしく思っています。野球をする子どもたち、野球に関わる関係者にとって、さらには他のスポーツに与える影響力という観点からも大きな意味のあるものと考えております。とりまとめいただきました全日本野球協会、またお忙しい中、本日ご同席くださった野球団体の代表の方々に心より感謝申し上げます。本年、誕生から30周年を迎えます「子どもの権利条約」の中では、遊びや、スポーツ、レクリエーションが子どもの権利の一つとしてうたわれております。スポーツは、年齢や性別、生まれた場所、障がいの有無等に関わらず、すべての子どもの成長を促す大きな力を持っています。ユニセフは、スポーツの力を、被災地での子どもの心のケアや、和解と平和のための活動など、様々な場で活かして参りました。しかしながら近年、世界的に、暴力的な指導や子どもの心身への過度な負担など、スポーツが子どもたちに負の影響を与えるような問題があることもわかってきました。そのような中、スポーツが本来持っている価値をあらためて共有したいとの思いから、スポーツに関わるすべてのおとなが協力して、子どもたちの権利を守っていくための行動指針として、この原則を作成しました。スポーツの指導者団体教育機関だけでなく、スポンサーなどとしてスポーツに関わる企業、成人アスリート、保護者も対象としたものとなっています。発表後はスポーツ庁からの通知によって、各都道府県や全国の教育機関などへの周知がはかられ、日頃より、また国際的にも歓迎されております。
 野球シーズンたけなわでございますが、子ども達が野球を心から楽しみ、野球をとおして健全に成長していける「子どもファースト」の環境づくりに、引き続き皆さまのお力添えを賜りたく、お願いを申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。本日は、本当にありがとうございます。

山中 正竹(一般財団法人全日本野球協会 会長)
 昨年の11月にユニセフ及び日本ユニセフ協会が発表なれました「子どもの権利とスポーツの原則」の内容について、今年2月のJOC総務本部フォーラムにおけるアントラージュ専門部会の報告の中で、日本ユニセフ協会より説明をいただきました。そして、その内容は野球界にとって重要な内容であると判断を致しました。「子ども」の定義が18歳未満ということを踏まえ、3月の理事会で、18歳未満の選手を抱えるアマチュア野球界の総意として同原則への賛同をはかるべく、各加盟団体で持ちかえることとしました。同原則の01~06は「スポーツ団体」と「スポーツ指導者」に期待されることが整理されています。日本の野球界は歴史的な経緯から、「選手」や「指導者」は各カテゴリーを統括するスポーツ団体~野球団体に所属し、各団体のルールに則って行動しています。このようなことを踏まえ、全日本野球協会単独での賛同表明ではなく、実際に選手や指導者が在籍し、それらを管理監督する立場にある各カテゴリー統括団体それぞれで、同原則へ賛同してもらえるよう働きかけをいたしました。本年6月のBFJ理事会において、全14団体の賛同を確認し、本日の一斉賛同表明に至った経緯でございます。
 続いて、BFJとしての一斉賛同に対する考えについてお話したいと思います。国連機関であるユニセフと日本ユニセフ協会が、子どもたちの権利を尊重し、スポーツが真に子どもたちの健全な成長を支えていくための指針をまとめ、示されたことは大変重い意義深いことであると受け止めております。しかし、残念なことではありますが、野球界においても、子どもたちへの行き過ぎた指導による暴力・暴言やハラスメント、あるいは勝利を優先するがあまり、選手を酷使し怪我に追い込んでしまうようなことがなくなってはいないのが現状です。本日、子どもたちが野球、スポーツを楽しんでプレーする環境を整えることを目指して、14団体が一体となって賛同表明をすることが出来ました。各団体はこれまでも子どもたちを守るために努力してきましたが、今回の賛同表明を機に、我々もさらに襟を正し、子どもたちがスポーツを楽しみ、健全な成長を支えられる環境づくりをより一層進めていくことに努めていきたいと考えております。またこの会見を報道等で知った指導者や関係者が、このことに対してより高い意識を持つことを期待したいと思っております。
 全日本野球協会は、現在、全野球人にスポーツマンシップが理解されるよう普及に力を入れています。1月の野球指導者講習会で講座を開設したほか、BFJ役員向けの研修会も実施いたしましした。スポーツマンシップの中核は「他を認める」ということ、「リスペクト」「尊重」の精神です。仲間を、相手を、審判員を、野球そのものを、ルールを尊重し、互いに認め合いましょうということです。スポーツに関わるすべての人間が、相手を尊重する、野球を尊重する、すべてを尊重することがスポーツマンシップであり、これは「子どもの権利」を尊重することと通じるものが大であります。また全日本野球協会としては、以前より代表チームの活動を対象とした通報相談窓口を設けていましたが、今年の3月の理事会では、暴力や差別を禁止する内容を含む、野球日本代表侍ジャパンの選手・役員らの「行動規範」を定めたり、今年6月からは、選手の健康を守り、また啓発を目的とした侍ジャパンの肩肘の検診活動を開始したりとアンダー世代の選手たちを守る取り組みを強化しております。
 各団体も子供たちの権利を守るための努力をされていますが、この子どもの権利とスポーツの原則に向き合うことで、野球界全体で力を合わせて、日本における野球というスポーツの価値を高めていくとともに、スポーツの素晴らしさを社会に発信してまいりたいと思っております。ありがとうございました。

日本ユニセフ協会 早水専務理事全日本野球協会 会長 山中正竹


【各団体代表者挨拶】≪要旨≫

谷田部 和彦 (公益財団法人日本野球連盟 専務理事)

 日本野球連盟は社会人野球を統括する団体であり、都市対抗野球大会が7月に東京ドームで行われたばかりです。また、野球競技の普及振興活動の一環として小学生や中学生への野球の技術指導を行っておりますが、その中には、礼儀や相手を思いやるといったことが含まれます。小学校の低学年や幼稚園児等には、野球の楽しさを伝えるため、ティーボール教室などを展開しています。今般、当連盟も「子どもの権利とスポーツの原則」に賛同させていただいたわけですが、将来ある子供たちがスポーツを通じて、健全に成長していけるよう日本野球連盟としてしっかりサポートしてまいりたいと考えます。

西岡 宏堂 (公益財団法人日本高等学校野球連盟 副会長、公益財団法人日本学生野球協会 理事)
 高校生を預かる当連盟として大事にしているのは選手を守ることです。病気やケガ、野球をすることによって生じる障害が原因で野球から離れてしまうということがないよう、よりしっかりと取り組んでいこうと考えています。投球数制限を含めた投手の障害予防の在り方についても、現在様々な議論が交わされております。
 また、不祥事が起きてしまった場合の対応については、過去には全てチーム全体での連帯責任としていたこともありましたが、現在では、例えば指導者個人の不祥事については、指導者のみが罰則を受ける形式をとり、指導者の不祥事によって子どもたちが野球をする権利が奪われることがないよう、運用を変えております。
 日本以外に住む、世界の子ども達に対しては、各都道府県連盟に呼びかけ、野球を通じた交流や用具の提供、審判員の派遣などを行って大変喜んでいただいております。野球の普及を通じて、世界の子どもたちに野球・スポーツをする喜び・楽しさを伝えていきたいと考えております。

坂谷内 実 (公益財団法人日本リトルリーグ野球協会 会長)
 「子どもの権利とスポーツの原則」に当協会も賛同をいたしました。当連盟は13歳以下の、小学生中心の硬式野球団体です。そのような中、日常的に指導者に対し一番注意をしているのは選手の安全です。プロ野球と同様のボールを使用しているため、小学生にとっては少し当たっただけでも衝撃が違います。指導者には子どもたちの安全が第一であると伝えています。それから子供たちの肩肘の障害予防について、リトルリーグ野球は早くから球数制限をとりいれています。これはアメリカ発信の世界共通のルールです。今回、このユニセフの原則に賛同した理由は、このような原則があるのだから、子どもたちにきつい負荷を与えないようにしないといけないと指導者に注意をする際に、この原則を活用させていただけると考えたからです。日本の少年少女野球の団体を預かる者として、日頃気にしているのは、熱心すぎる指導者がいることで、プロと同じ球を使う中で、例えば、燃え上がった指導者が高校生・大学生と同じ球速でノックすれば子ども達には危険が伴います。今後も「子どもの権利とスポーツの原則」を活用し、子ども達の健全な成長を促すように活動してまいります。

井熊 秀行(一般社団法人全日本少年硬式野球連盟 常務理事)
 当連盟は中学生が中心の団体です。(中学硬式野球は)全国に5団体あり、「日本中学硬式野球協議会」をつくり、JABA(日本野球連盟)指導の下、色々なテーマを話し合っています。今回の10項目の原則には賛同という立場ですが、具体的な施策はリーグに持ち帰り、具体化していくためにどうすればよいか考え、その施策を進めていきたいと考えています。既に10項目の原則の中でも導入している事柄もあり、例えば投手の障害予防については、投手のイニング制限を3年前から導入し、公式戦において採用されています。原則のパンフレットの中には、「スポーツにルールがあるように、指導にもルールが必要だ」という写真がありました。JABA指導のもと指導者講習会を開催しておりますが、障害予防を防ぐために整形外科医や柔道整復師などの講師を呼び、指導の中に医学的な見地を取り入れていこうとしています。また、野球における事故をどうすれば未然に防げるのか、暴力問題は指導者講習会の実施により皆無となってきましたが、暴言については起こっていることが否めません。指導者講習会を通じ、子どもに対する指導がどうあるべきか、協議会を通じ、JABAの指導を受けながら進めていきたいと思います。

【会見に出席できなかった各団体からのコメント】(順不同)

木下 宗昭(公益財団法人全日本軟式野球連盟 会長)

 今回の賛同表明を機に、選手が安心安全に、いつでもどこでも楽しく軟式野球ができる環境の整備を、さらに推進してまいります。

藤田 英輝(公益財団法人日本少年野球連盟 会長)
 日本ユニセフ協会「子供の権利とスポーツの原則」に賛同いたします。本連盟の目的である野球を通じて次代を担う少年の健全育成に努力してまいります。

林 清一(一般財団法人日本リトルシニア中学硬式野球協会 会長)
 日本ユニセフ協会の子どもの権利とスポーツの原則に賛同いたします。弊協会も野球を通じて子どもたちの健全育成に努めます。

広澤 克実(一般社団法人日本ポニーベースボール協会 会長)
 ユニセフ『子どもの権利とスポーツの原則』に賛同いたします。当協会の理念であるPROTECT OUR NATION’S YOUTH(国の宝である子供の成長を守る)のとおり、野球を通じて子供たちの健全育成に努めてまいります。

吉留 勝己 (九州硬式少年野球連盟 会長)
 日本ユニセフ協会の子どもの権利とスポーツの原則に賛同いたします。本協会は、野球を通じて少年少女の健全な育成に努めてまいります。

志太 勤(一般財団法人日本中学生野球連盟 会長)
 子供たちを守るこのような取り組みに、大いに賛同させていただきます。スポーツ(野球)を通じて、次代を担う子どもたちの健全育成にこれからも努めてまいります。

長谷川 一雄(一般社団法人全日本女子野球連盟 会長)
 日本ユニセフ協会「子供の権利とスポーツの原則」に賛同いたします。本連盟は野球という素晴らしいスポーツを通じ、将来を担う子供たちの健全な育成に努めてまいります。